一般社団法人 日本くすりと糖尿病学会

キックオフ・シンポジウム 開催レポート

キックオフ・シンポジウム会場の様子


「薬と糖尿病を考える会」の発足にあたり、2011年11月6日(日)に東京都港区の北里大学薬学部においてキックオフ・シンポジウムが開催されました。当日の参加者数は330名を超え、糖尿病領域における薬剤師の本研究会に寄せる期待の高さを感じることができたことは世話人一同の喜びであり、今後の活動の礎となったことを確信致しました。

*研究会の紹介

特別講演に先がけて世話人代表より「薬と糖尿病を考える会」の発足の主旨について説明をしました。以下の3つの目標を掲げ、薬剤師としていかに糖尿病治療に貢献するかをスローガンとしています。

1)基礎薬学研究者と病院・薬局薬剤師の連携強化

2)糖尿病療養指導における技術・知識の維持と向上

3)糖尿病領域における基礎・臨床薬学分野の学術研究推進と確立

糖尿病療養指導の資質向上のみならず、糖尿病治療薬・糖尿病療養指導における新たな知見の創出においても意義のあるものとするべく努めて参ります。

杉山雄一先生
杉山雄一先生
*基調講演

東京大学大学院薬学系研究科教授の杉山雄一先生により、「糖尿病治療と基礎薬学研究」と題して薬物の代謝に関与する酵素やトランスポーターが糖尿病治療薬にどのような影響を与えるかについてご講演いただきました。基礎的な解説から臨床において役立つ具体例まで提示していただき、先生の研究への情熱、基礎研究が臨床にとっていかに大切かが伝わる内容でした。


門脇孝先生
門脇孝先生
*特別講演

東京大学大学院医学系研究科教授(糖尿病学会理事長)の門脇孝先生により、「糖尿病治療の最前線」と題して数多くの最新の臨床成績について報告がありました。さらに、わが国の糖尿病治療における特徴や課題などについて解説していただきました。そのなかで経口血糖降下薬の選択基準について、日本糖尿病学会ではインスリン分泌促進薬、インスリン抵抗性改善薬、食後高血糖改善薬の3種類の医薬品を患者の病態に合わせて使い分けるよう推奨しており、その際には治療段階での血糖コントロール改善、インスリン分泌の低下および抵抗性改善、長期予後のデータ、副作用や患者の意向および医療経済という4つの要旨を考慮することが重要で、この中でも特に長期予後に関しては患者にとって最も重要になるので留意すべきであることを力説しておられました。

両講演とも、席を埋め尽くして聞き入る参加者の真剣な眼差しが大変に印象的でした。

*シンポジウム「糖尿病薬物療法の発展にいかに貢献するか」

午後からのシンポジウムでは「基礎薬学研究の現状と課題」森下真莉子先生(星薬科大学薬学部)、「臨床薬学研究の現状と課題」朝倉俊成先生(新潟薬科大学薬学部)、「薬学研究を生かした療養指導業務」西村博之先生(陣内病院薬剤部)及び佐竹正子先生(薬局恵比寿ファーマシー)と4題のご講演をいただきました。

森下先生はドラッグデリバリーシステムのご研究の観点から、糖尿病用薬の治療システムの可能性を解説してくださいました。朝倉先生には臨床を経て研究に携わっている経験から、「患者の病気治療(療養)のために何ができるか?」を念頭にインスリン製剤の問題点を研究しておられる成果と、臨床でのその知識の生かし方をお話しいただきました。

糖尿病専門病院で療養指導に従事する西村先生は、タオルで保護した保冷剤を保冷パックやクーラーボックスを用いて、炎天下においても適正な温度で保管できる方法の検討した結果をお示しいただき、療養指導に役立つ具体例を教えていただきました。薬局薬剤師として療養指導を行っている佐竹正子先生は、長年にわたり指導強化月間を設けて低血糖の説明を重点的に行い、血管合併症への影響を考慮し内科医、眼科医と連携して禁煙指導を行っている実例を報告してくださいました。病院および薬局での療養指導において行われているこれらの様々な工夫が、客観的に評価されて臨床研究につながっていくことが今後の大きな課題であると感じました。

それぞれの演者の発表は参加者にとって刺激的で大変に好評であり、質疑応答も活発に行われました。特に基礎研究、教育と臨床の連携のための大学の基盤作りについて熱く語られたことは、重要であると考えられます。

*災害活動支援報告

プライマリケア学会にも所属する笠原徳子先生(よつ葉薬局)の「石巻市女川町における薬剤師による支援活動」では、被災地の多数の写真を提示すると共に、混乱した現地で多職種が協同していかに早期に問題点を発掘し対応していくかが重要であると強調して述べておられました。

その他、4つのランチョンセミナーが開催され、企業展示も出展されました。シンポジウム終了後の茶話会では、全国から参加いただいた方々と交流することができました。また、東日本大震災の義援金へご協力いただきましたことを感謝申し上げます。

本会は2012年1月より、一般社団法人「日本くすりと糖尿病学会」として新たなスタートを切りました。2012年9月22・23日には、本会の第1回学術集会を星薬科大学(東京都)にて開催します。本学会では「くすりと糖尿病」に関連した課題に研究的視点で取り組む薬剤師にとって有意義な場を提供するとともに、糖尿病領域に足を踏み入れたばかりの臨床現場(病院・薬局)の薬剤師にとっても療養指導の要点を簡潔に提供する掲示板的存在として活動していく所存です。

世話人代表 厚田幸一郎(北里大学薬学部・北里研究所病院薬剤部長)